50万円と5万円を隔てるもの。

50万円と5万円を隔てるもの。
それはずばりである。

2年前の散財への反省と、財布の紐を緩ませる/縛らせるアパレル店員さんの話。

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50万円。
これは、2年前、2014年の1年間で、大好きな某アパレルショップで買った服の総額である。

…………( ゚д゚)

今となっては閉口する額だが、決して後悔はしていない。
ジャケット、スカート、ブラウス、ストール…ありとあらゆるものをこのお店で揃えた。

何故、同じお店で50万円もの服を買ったのか。
デザインや素材が好みなのは言わずもがな、それだけでは1年間で50万円という金額を同じお店では使わない。

ものすごく腕のいい店員さんがいたのである。
小柄でぽっちゃりした体型のKさんという女性。

「ぽっちゃりなりに、かわいい服を着たい。体型を少しでも誤魔化したい」(←ダイエットしろ)という願望を胸に、服を探していたぽっちゃり女子の私は、失礼ながら、同じコンプレックスを共有できるという点で、すぐにKさんと意気投合した。

新作入荷のつど、こまめに葉書をくれるKさん。
「新作チェックしつつ、Kさんとお話ししよう」と、当時の私は足繁くそのお店に通っていたが、足を運ぶ度にKさんの凄さを知る。

特に驚いたのは以下の2つ。

まず、私がその時着ていた服と、「こんな服持ってます」と言った私のワードローブを、全て記憶していた。

すげぇ…(°_°)
アパレル店員さんってみんなこうなのか⁈と当時の私は驚愕。

全て記憶してくれているから、新しく服を選ぶ時も「このセーターは、前に履いてたロングスカートに合いますよ」「このジャケット、〇〇さんお持ちの、白い無印のタートルとDMGのキュロットと合わせたらどうですか?」etc.自宅のクローゼットを思い浮かべながら会話ができる。
イメージが湧くから、あぶく銭をはたいて服を買ってしまう。

さらにKさんの凄い点は、手持ちの服から好みを類推する力。
だいたいお店に行く時は、特に何も欲しいものはない状態(ならお店に行くな、と2年前の私に突っ込みを入れたい)。
「〇〇さん好きそうなスカートが入ったんですよ〜」というKさんの勧めを受けることが多かったが、打率8割。服の形や色、ディテールへのこだわり等、ほぼドンピシャで私の好みを突いていた。
逆に、今まで全く着たことはなかったけど、Kさんに勧められて「お、これ意外と好きかも…!」と気づくこともあった。
そしてまた服を買い、積もり積もって50万円…orz

Kさんは、この他にも、商品知識も豊富だった。筋書き通りの説明ではなく、顧客の求める商品知識を、顧客の求めるタイミングで提供していた。

Kさんの仕事には、愛が感じられた。
ファッションやお店、そして接客業という仕事への情熱。
接客業あるあるな、顧客を裁く姿勢ではなく、顧客の目線に近づこうという姿勢。
その姿勢に魅了され、私はお店に幾度となく足を運び、散財した。

残念ながら、Kさんは翌年春に退職された。
退職前には長いお手紙を下さり、退職日には挨拶に伺い「今までありがとうございました。新天地でのご活躍をお祈りします」とお礼を告げた。同時に、お店に行く理由がなくなり、私の散財記録も50万円でストップした。

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それから2年後、今年のお正月。
私は2年振りに、そのお店に足を運んだ。
Kさんがいないことは承知していたが、そのお店が大好きで「初売りセールで安くいいもの買えたらいいな」と思ったのである。

そこで私は失望した。

良い服は買えたけど「ここでこれ以上服を買いたくはないな」という不快感と共にお店を出た。

店員さんの対応があまりにも杜撰だったのである。

まず、試着室に通すものの、試着後は見向きもせず。チラッと目が合ってもノーコメント。

…( ゚д゚)
何か言えやコラ。

次に「どんな服が欲しいんですか?」と聞かれて「いや、特に欲しいものはないんですけど、何か良いものあったらいいなーって…」と答えると、明らかに似合わない上にサイズの合わないセール品を押し付ける

……( ゚д゚)
ぽっちゃり女子の私にXSサイズwww
え、喧嘩売ってる??

しまいには「このお店は初めてですか?」と聞かれたので「このお店大好きなんです。素材が良くて、シンプルだけどディテールにこだわりがあって。2年前にKさんという店員さんがいた時に、よく来てました」というと、「そうなんですか。私は9月からこの店舗に配属になりました。新卒なんです。アパレル業界に入りたくて…」と自分語り。

………( ゚д゚)

お店のブランド褒めとるのに、スルーかよ。

悪い接客「松・竹・梅」の様なものをまざまざと見せつけられ、半額セールのジャケット、セーターを買って退散。4万円也。
今後しばらくは足が遠のきそうな予感。買っても+1万円位。

新卒の店員さんに足りないのは、愛だと思う。
ファッションやお店、そして接客業という仕事への情熱。
新卒だから、自分のことでいっぱいいっぱいなのはすごく分かるけど、とは言えあまりにも、無関心すぎるんじゃないか。
どうしてもKさんとの思い出が頭から離れず、余計に残念な気持ちになった。

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Kさんと新卒の店員さんの仕事への愛の差を見て、ふと己を振り返る。
私は今の仕事への愛はない。
だから、きっとKさん程に、良い仕事は出来ていないんじゃないかなぁと思う。
新卒の店員さんに偉そうなことを言う資格は私にはないのかもしれない。

仕事への愛が仕事の質を決める。
私は少しでも良い仕事がしたい。
だとしたら、もう少し、今目の前にある仕事に、同僚に、愛を持って働きたい、もしくは愛を持てる相手と働きたい。

セールでの戦利品に初めて袖を通して出勤した今日。
そんなことを考えながら、仕事を終えて帰路についた。